純木造の心地良さを感じて頂きながら、ほっとする優しいぬくもり、安らげる落ち着いた空間作りにこだわりました。
1.長い廊下
当館自慢の廊下は、長さが約80メートルもあり、お客様からは「長すぎる!」とか「キレイで気持ちいいよ!」とか様々なご意見を頂いております。
廊下と言えば、かの有名な「松の廊下」では、時代劇の忠臣蔵で元禄14年(1701年)3月14日に、赤穂藩主であった浅野内匠頭が、吉良上野介を斬り付けた場所でもあります。この廊下は、本丸御殿の大広間から将軍との対面場所まで全長約50メートル、幅4メートル程の畳敷きで、廊下に沿った襖に松が描かれていた事から「松の廊下」と言われるそうです。
当館の廊下は、勿論そんな事をイメージした訳ではなく、単に廊下を廻っていく事に重点を置きました。
自宅にお風呂がありながらわざわざ当館にお越し頂けているのは、とりもなおさず当館で過ごす非日常の時間の中で、ほっとするやすらぎやうるおいから「また明日からも頑張ろう!」という気分転換の場所として当館をご利用頂けているからだと思います。
つまりは、日常から非日常に入っていく「つながりの空間」として「長い廊下」を設けました。
現在壁には、浮世絵師である安藤広重作「東海道五十三次」に日本橋と京都を加えた全五十五宿の版画が順番に飾ってあります。
今後は、葛飾北斎の「富嶽三十六景」等を飾っていきたいと思料していますので、どうぞご期待下さい。
2.渡り廊下
当館は、温浴部と食堂・休憩所の施設間が大きく分けられます。
これは、当館の面積が純木造のため、一定規模を超えているので、消防署の指導により約5メートルの渡り廊下(RC造)で施設を分割しています。
この空間に濡れ縁を設けて、喫煙所として利用しています。又男性の脱衣所の隣にも濡れ縁を設けて、休憩所として利用しています。
防火上、延焼を避けるためのこの5メートルの空間を効率よく利用出来たと思っています。
3.中庭
ご存知の如く建物の中にある庭の事で、京都を特集する旅行雑誌などには必ず出てまいります。非常に奥行きの長い町屋に、通風と日照を取り入れた趣きと実用性のある坪庭がイメージされます。
一方、ヨーロッパの中でもスペインの中庭(パティオ)と言いますと、これは規模も目的も単なる吹き抜けの実用的なスペースにとどまらず、パティオが主体で他の部屋が従というような感じがいたします。
ずいぶん前になりますが、スペインのアンダルシア地方を訪れた事があるのですが、石造りの建物を抜けた商店街の雑踏の中で、全く素晴らしいの一言のパティオに遭遇した憶えがあります。
当館の中庭にも、そんな異文化のすばらしさ、優雅さ、歴史的な考え方を取り入れてみたかったのですが、建物と設備にあまりにも予算を使いすぎて、現実には誠にシンプルな中庭となりました。
店主のこだわりも、お金には勝てなかったという話しですが、出来上がった中庭としての存在感は充分にありますので、今後どのように手を加えていくか考えています。皆さんのご意見ご指導を宜しくお願いします。
4.南天の間
「南天の間」は、畳敷きの休憩所です。南天は、6~7月頃に白い花が咲き、秋には赤い実を付けます。
「南天のど飴」という商品がある如く、咳止め効果があると言われています。花言葉は「福をなす」「機知に富む」を表します。
女湯露天風呂を「福寿草の湯」と命名していますが、正月の縁起物の飾り付けとして「難を転じて福をなす」という洒落っ気の意味も込めてあります。
「南天の間」は、寝ころんでうたた寝をする場所だけでなく、家族との待ち合わせや久しぶりに再会した人とのおしゃべりを楽しむ場所でもあります。
東側の中庭に、南天の木が植えてあります。まだ小さいですがご来館の際にはご覧になって下さい。
5.提灯(ちょうちん)
提灯は、純木造の建物にはぴったりで玄関の天井に大きな丸いものを吊り下げてあります。提灯の産地は、小田原、岐阜、讃岐あたりが有名ですが、当館では岐阜から取り寄せたものを使用しています。
さて、造形学的なデザインの基本とは、○(まる)、△(さんかく)、□(しかく)の組み合わせと言われています。事実、この三種を上手く組み合わせる事によって味わい深い落ち着いた感じを出す事が可能です。
純木造の建物では、△(さんかく)や□(しかく)のデザインは随所に散見されますが、○(まる)は少ないようです。ここで言う提灯とは、勿論○(まる)のデザインであります。
そこで、この○(まる)のデザインである大きな提灯を玄関天井に吊り下げて、自然に落ち着いた調和が取れるよう工夫しました。
脱衣所等にも提灯が吊り下げてありますが、こちらは短冊をひねったような曲線のデザインにしました。ご来場の折には、天井の提灯にもご注目下さい。
6.露天施設のご紹介
今回は「蒲公英の湯」「公孫樹の湯」について紹介させて頂きます。
7.蒲公英の湯
当館男湯の露天風呂に「蒲公英の湯」と名付けました。花言葉は、「真心の愛」「愛の神託」等です。
種子になって「風に乗って飛んでいく」という所が、何か男の淋しさ・身勝手さを表しているようだと思いませんか?
たんぽぽは、英語でダンデライオンと言います。これはライオンの歯という意味で、たんぽぽの葉のギザギザがライオンの歯に良く似ている事から言われるそうです。花の色は黄色のものが多いですが、白やオレンジ色のものもたまにあるそうです。
根や葉は、食用や薬用としても使われていますし、たんぽぽの花の天ぷらやたんぽぽコーヒーには、デトックス効果があるとも言われています。
春になると、どこにでも咲いているポピュラーな花です。種子の丸くなっている様が「たんぽ」(蒲英:稽古の槍の先につける綿を丸めて布で包んだもの)に良く似ている事から「たんぽ穂」と名付けられたそうです。
ダンデライオンと言えば、私の自宅近くにダンデライオンと言うモーニングサービスが人気のコーヒーショップがあります。コーヒーにトースト(バターとジャム又は小倉付き)と野菜サラダと茶碗蒸しが付いて350円という安さで、休日の朝はここで過ごす事が多く、そこの主人にダンデライオンがたんぽぽの事だと教えて頂きました。
最後に「蒲公英」という漢字ですが、読む事は出来ても書く事が出来ない漢字と言われています。皆さん一度お試し下さい。
8.公孫樹の湯
一般的には銀杏と書きます。花言葉は「鎮魂」「長寿」「しとやか」。当館の女湯釜風呂に「公孫樹の湯」と命名しました。
ちなみに風呂の入り口には、イチョウの葉をデザインした版が付けてあります。
公孫樹とは、種を蒔くと孫の代になって実のなるという意味です。つまり長寿の木である事の証です。
先日、鎌倉市の鶴岡八幡宮にある大イチョウの木が強風で倒れたとのニュースを見ました。現在修復作業中らしいですが、神木の名の通り折れた根元から新たな芽が出始めているとの事です。
イチョウの葉には、脳の血流を活性化させる効果があり、今流行りのサプリメントにもなっています。
さてイチョウと言えば、銀杏です。茶碗蒸しの具にしても美味しいですが、フライパンで数粒炒ったものは病みつきになる味です。「プチッー」とはじける音を聞きながら、まんべんなく転がすように炙るというか炒ってる時間は楽しい事この上ありません。
しかし、銀杏には中毒の危険性があるので食べすぎには注意しなくてはいけません。
当館の釜風呂は、50℃前後の低温の「蒸し風呂」です。一般的な高温のドライサウナでは、特に女性の方はお肌の乾燥が気になるところですが、「公孫樹の湯」なら長時間ゆっくり入って頂けるので、美容に健康に又心の安らぎとうるおいを満喫して下さい。